2010年07月17日
北ア)後立山 白馬岳 (2,932m

【行程(車)】
  相模原〜(中央道)〜豊科IC〜白馬村猿倉(登山口)
  |・・・・・2時間30分・・・・・|・・50分・・|・ 車中泊・

Movie はこちら ⇒ 「白馬岳」でご覧ください

【コースデーター】
 途中写真撮影などでタイムロスが多いので・・・参考程度に
 
到着/出発 標 高
猿倉 (登山口) 5:30 1,230m
白馬尻 {朝食) 6:20/7:23
1,550m
葱平 9:50/10:20 2,350m
白馬岳 白馬山荘(泊) 14:30 / 7:40 2,932m
三国境(写真撮影) 8:20/9:10
2,751m
小蓮華山 9:50 2,750m
白馬大池山荘 12:30/1320 2,410m
白馬乗鞍岳 13:50 2,456m
天狗原 14:40 2,204m
栂池ロープウェイ駅 15:50 1,800m
この夏、白馬岳で起きた山岳事故について

 忙しさにかまけてレポートが遅れてしまいましたが、その間に私が登って来た白馬岳で大きな事故が立て続けに発生し大変驚いています。  2008/7/10 大雪渓下部で起きた落石事故、2008/7/27 三国境付近での雷による事故、そして、2008/8/19 大雪渓葱平の崩落事故、雷事故に遭われた方は無事救出された様ですが、残念なことに落石事故では44歳の女性がお亡くなりになり、葱平の崩落事故ではベテランのガイドと女性が巻き込まれて亡くなり、数名の方が未だに発見されておりません。 
 お亡くなりになった方々には、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

・・2005年8月11日に発生した大崩落の記憶

 この白馬大雪渓では、小規模な崩落・落石が常に発生しています。 2005/8/11 杓子岳側の大崩落で、大きな事故が発生したのは記憶に新しいと思いますが、実はこの日に私も大雪渓を登る計画をしていました。 二日前に実家の安曇野に帰省し準備をしている時、”このところ白馬岳周辺では大雨が降り続き地盤が緩んでいる・・危険だよ!” との情報と忠告を頂いたため、白馬岳の雪渓登りを諦め常念岳に行き先を変更しました。・・・そして当日、一ノ沢から常念に登り、常念小屋でTVニュースを見ていると、なんと!「7:30頃、白馬大雪渓で大崩落が発生、登山者数人が巻き込まれた模様・・・」と、ヘリから映した中継映像が報道されているではありませんか! もし計画どおり白馬大雪渓を登っていれば時間的にもこの崩落に遭遇していたかも知れません。 ”助かった!”と思いつつ鳥肌が立ったのを思い出します。 ニュースを見ていた人達の中にも、私と同じように白馬雪渓を登る計画を変更してここに来たグループもいて、驚きの声となんとも言えない重苦しい溜息が漏れていたのを思い出します。
 今回(2008/8/19)の崩落事故も、2005年の崩落と非常に似た環境で発生しており撤退したグループも多かったと聞いています。 大雨の中強行して事故に遭遇したグループに
「雨続きの時は雪渓に踏み込むな!」と言う教訓が生かされなかったことは、非常に残念でなりません。
 登山には危険が付き物です。 特に私を含めシニアの登山には、”石橋を叩いて渡る”ような慎重さ”と、少しでも危険があれば無理をせず撤退する”勇気”・・ある意味での”気楽さ”が必用だと思います。  山は逃げません・・・コンディションの良い時、又来れば良いんです。

【一日目】 天気:無風・快晴 
■猿倉(5:30)〜白馬尻(6:20)
 猿倉に着いたのは1:30頃、5:00に起き5:30には林道をゆっくり歩き出す。
昨夜局地的に降った雨もすっかりあがり快晴だ。 20分位登っていくと山頂が朝日に照らされた白馬岳が見えてくる。途中、曲がりくねった林道をショートカットし暫くすると道は登山道に変わる。 温まってきた体に、朝の冷気が気持ち良い。 見事なキヌガサソウの群生が見られるようになると、白馬尻は近い。
 ”ようこそ白馬大雪渓”の文字が目に飛び込んでくる・・白馬尻小屋到着だ。 雪渓の雪解け水が流れる清流沿いにベンチがあり、ここで大雪渓を望みながら朝食にする。


ここから大雪渓へ踏み込む

■大雪渓の取っ付き(7:35)
 白馬尻小屋の脇を少し登ったところから、いよいよ雪渓に入る。
10本歯のアイゼンを使うつもりだったが、カメラレンズを一本よけいに詰込んだので、迷った末に簡易アイゼンを持ってきた。 ここでそのアイゼンを装着。 ここから葱平らまで 800mの標高差を一気に詰める。落石の危険があるため雪渓では休憩がとれないので、気合を入れ登り出す。 雪渓は絞まっていて歩きやすいのだが、斜面が急になるに連れつま先が滑る。荷物に余裕があればやはり10本歯が正解だった・・。 一時間ほど登ると日差しは徐々に強まり、雪上でも暑いくらいだ。 シーズン寸前の空いている時を狙っての山行だったので、雪渓には登山者が少なく、快適にベニガラルートを登り予定より早く上部に到達する。

大雪渓上部 (左が杓子岳、右の斜面が今回の崩落個所)
■大雪渓上部・・・ 落石が多発!
 大雪渓の上部まで登ると、雪渓上に落ちてきた石がゴロゴロ転がっている。 
雪渓の両脇の斜面からはガラガラという落石の音が頻繁に聞こえてくる。 先行者の ”ラク〜”という声で上部を見上げると、右側の山から70cm位の石が勢いよく落ちてきている。 石は雪渓の中央まで来ると真下に方向を変え、音も無く先行している二人に向っている。 二人は立ち止まり、しっかりと石を睨み付け構えていたが、落石は勢いを増して後ろの一人の眞正面に向かって来た。寸前で片足を上げながら体をひねって避けたが・・・見ていても本当に冷や汗ものだった。 この日は、葱平に着くまでこの様な落石が数回あったが、動転してパニックに陥ってしまうと非常に危険である。・・・慌てずに、落ち着いて対処しよう!
 今年は雪が多くクレバスも少ない。 山裾にクレバスができると、そこで落石を吸収してしまうのだが、右側からの落石は殆ど雪渓の中央まで転がってきていた。

葱平より杓子岳下部(崩落個所)
■葱平(ネブカッピラ)
 葱平の下部約200mの範囲は大小の落石が雪上一面に転がっている。 ここが一番危険な個所のため、左右の岩壁を交互に監視しながら一気に通過する。・・幸いにも先ほどまで発生していたガスも晴れ視界は良好だが、疲れが出ているため息が上がる。

 9:50 葱平到着
 安全な中断まで登り大休止する。 ここはお花畑でシロウマアサツキが咲く場所だが、まだ少し時期が早いようだ。 上部の小雪渓の雪解け水が滝のように流れ落ちている脇に腰を下ろし、2005年に起きた杓子岳下部の崩落個所を眺める。そこは下から見上げるのとは違い、すさまじい傾斜で雪渓に切れ落ちていて、絶えず土砂や石が転がり落ちている。 この斜面は、大雨で緩む度に大きな崩落が起き、杓子岳が崩れて無くなるまで繰り返すだろうな・・と、容易に想像できる。 

期待した、お花畑辺り (案内板も雪の下)
■小雪渓をトラバース
 葱平のガレ場を20分ほど登ると小雪渓に着く。 急傾斜の雪渓には山小屋の小屋番の皆さんが切ってくれたトラバースルートができていた。 ピッケルを持っていないと怖くて渡れないような急斜面だが、この切れ込みのおかげで難なく通過することGができた。

■お花畑は雪の下
 途中で昼食をとり、お目当てのお花畑へと登る。 しかし、何処にも花畑は見えず、1〜3mほどの厚みのある雪田しか見えない・・・・。 今年は梅雨に雨が少なかったので雪が解けずに、写真(左)のような状態。残念だが仕方が無い! 後一週間もすると、この雪が溶け、辺り一面に可憐な花が埋め尽くすことだろう。

稜線に咲くミヤマオダマキ(後ろは杓子と鑓ケ岳)
■ミヤマオダマキ(←写真)
 しかし既に雪解けした湿地の一部には、ミヤマオダマキや白馬タンポポ、ウルップルソウ、ミヤマキンポウゲなどが可憐な花を付けていた。

 高山に咲く花の素晴らしさは、なんと言っても色の鮮やかさでしょう。
降り注ぐ強い紫外線のため、下界とは比較できないほど鮮やかな色の花を付けます。 
そしてもう一つは、厳しい環境の中、限られた時期・限られた場所に一斉に開花することでしょう。
■白馬岳山頂と白馬山荘

 日本最大(約1000名収容)の山小屋と言われる白馬山荘に到着。
今日はシーズン寸前のため宿泊客は50人程と、ガラガラ状態である。
・・夏山でこんなに空いているのは初めてのこと、昨夜は車の運転で殆ど寝ていなかったので、夕日の時間まで大の字になって一眠りした。
■夕日に染まる稜線を見ながらワイン
 食事の後は、貸切状態の展望レストランへ移動し、刻々と色を変えながら暮れて行くアルプスの稜線と、雲海にポッカリ浮かんだ立山の剣岳を眺めながら一杯!
 レストランの雰囲気も良いが、その窓に広がる景色が素晴らしい。
夕日が雲海を赤く染め、杓子と白馬鑓ケ岳をガスが包み込む。そして旭岳の雪渓が深いブルーに輝きだすと、やがて夕日は旭岳の山頂から、雲海の彼方に沈んで行った。
 

          
【二日目】 天気:霧、小雨

白馬岳(ガスの中)からの稜線
 二日目は朝から雨、稜線はガスで霞んでいて見通しは悪い。
朝食時に情報を集め多結果、予定していた鑓温泉経由の下山ルートは、一日で下るのは危険と判断し、比較的危険の少ない白馬大池経由、栂池へ下るルートに変更する。

■白馬岳山頂〜三国境
 白馬山荘を 7:40に出発。緩い稜線の道を少し登ると白馬岳山頂に着く。山頂はガスの中で展望は利かないが、新田次郎の「強力伝」で有名な花崗岩の標石が組み立てれている。  期待していた写真撮影も諦め、ガスに包まれた稜線を見国境に向って下る。この登山道はさほど危険な個所は無く快適に歩ける。
 三国境手前まで下ると、富山側の斜面に可憐なコマクサが一面に割いている場所があり、ピンク色のお花畑のようだ。

満開のコマクサ
■三国境〜船越の頭〜小蓮華岳
 雪倉岳方面と分ける三国境に出ると、昨夜は大池に泊まり雪倉岳を目指しているという単独登山者と出会う。 ・・・比較的いいペースでここまで登って来たようだ。更に、小蓮華方面へと進むと、空が明るくなってきた。 時折ガスが薄くなり、青空らしいものも見える。 小さなピークをいくつか越えると、船越の頭と思われるピークの頂上に着いた。雨もあがって、ガスが流れると時折、雪倉岳の雪田が見え隠れしているのでこのピークで大休止する。
 カメラをザックから出し、小一時間程シャッターチャンスを待つが、思ったようには山は姿を現してくれない。その間に近くに咲いていたコマクサのを撮る。丁度咲きはじめで、花は全く痛んでおらず初々しい。
 大休止後小蓮華に向う。途中、白馬大池から登って来る何組かのパーティーと擦れ違う。

9:50 小蓮華到着 

白馬大池
■小蓮華〜白馬大池(昼食)
 小蓮華岳は崩落の危険があり、ピ−クへは立ち入り禁止なっていた。 ガスも濃くなり視界は30m程しかない、晴れていれば足下に白馬大池が見え、素晴らしい展望が広がっているはずだが・・・ 残念!
 小蓮華を過ぎると、登山道は急な下りになり、来た方向に戻ってしまうような錯覚に陥る。 下に白馬大池が見えていれば、このような錯覚は無いと思うが・・これが山の怖いところで、濃いガスの中では迷いが出てしまう。 間違えて蓮華温泉方面に下ってしまわないよう、方位計と地図を確認しながら、ハイマツの斜面を下っていくと、やがて雪渓を横切り平坦な場所に出た。・・・・よく見るとガスの中、50m程先に赤い大きな建物らしいものが薄っすらと見えている。・・・・白馬大池山荘だ!(ホッと一案心)
 ここで昼食をとらせてもらい、ケーブルの最終時間を確認する・・16:30分
一時間ほど休み出発。

白馬乗鞍岳山頂
■白馬乗鞍岳〜天狗原〜ロープウェイ駅
 山荘から白馬大池を回り込むようにして大きな岩を越え登っていくと、やがて平坦で広々としたハイマツに覆われた乗鞍岳に着く。 (写真のケルンが山頂標識) 山頂を越えると足下に天狗原の湿原が見えてくるが、その前に結構急な雪渓を下りなければならない。 雪渓の下からは登って来る登山者数名が見えるが、急斜面で相当きつそうだ。 
 気温が上がり表面の雪がだいぶ緩んでいて、うっかりすると滑落しそうである。途中から一歩一歩滑りながら下りるのが面倒になり、私はストックを使ってグリセードで一気に雪渓下部まで滑り降りてしまったが、急斜面の下は岩場のため転倒すると一気に岩場へ落ちることになるので、止めておいた方がいいでしょう。
■天狗原〜ロープウェイ駅
 歩きにくい大きな岩伝いの登山道を下りきると天狗原に着く。
ワタスゲや水芭蕉等の植物が群生している湿原の中に木道が設置してある。途中に休憩ベンチもあったが、最終のロープウェイに間に合わせるため、休憩無しで一気に下る。 
 天狗原を過ぎると、足場の悪い九十九折れの急な登山道になる。 運悪くこの頃から雨足が強くなってきて、年度質で滑りやすい登山道が川の様な状態になってしまい、途中何度かスリップし転倒しながらも、16:10ようやくロプウェイ駅に到着。
 16:30 発の最終が既に待っていて、乗り残しの人がいないか、係員が売店などの客に確認しているところだった。 

■栂池からタクシーで猿倉の駐車場まで移動・・・料金は 約5千円だった。